標題:
人には向き不向きってものがある
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作者:
s4g9awe6n5s4
時間:
2014-9-18 22:22
標題:
人には向き不向きってものがある
主の批判をしていたことに気付き、料理番ははっとしたように口を押さえる。取り繕うような笑みを浮かべた。
「いやあ、それにしても、だったらレイディアス様はメイリアの恩人のようなもんですから。菓子でも飲み物でも、いつでも言ってください」
軽い口調で胸を叩くのとは裏腹に、料理番は期待するような、縋るような目をしていた。
城の主人達が暮らす場所と違い、下働きの区画は寒く防寒用のタペストリも掛けられていない。彼等の食事からも、この城がレイディアスの知るアルクの縮図に見えて仕方が無い。彼は無力で、もはやこの地は彼の手の及ばない所にある。異郷となったのだ。それなのに彼は胸の奥がざらついてならなかった。
料理長の視線を避けるように顔を背ける。その先で下働きの女と目が合った。彼女の瞳に似た色を見て、いよいよ彼はいたたまれなくなる。
彼等は、絹の服を着ていれば皆権力があるものと誤解しているのだ。不満があるなら伯爵かアグネシスに言うべきだろう。無言の訴えを跳ねのけるようにしてレイディアスは軽快に返した。
「それなら、朝食の香草茶だけはやめてくれないか。材料があるなら自分で調合したいんだが」
途端に厨房の隅で使用人の一人が硬直し、彼は急いで罰するつもりは無いと言わねばならなかった。
「私にはさっぱり見分けが付かないんですが」
持って来られた大量の薬草を前に、ジャべスが困惑の声を上げた。エリアスがそれを聞いて癖になったように顔を顰める。
「それでも隊長ですか。怪我を癒しきれない時のために多少の薬草学は必須でしょう」
「治癒の術は得意だから関係ないよ。人には向き不向きってものがある。そう思いませんかレイディアス様」
弁護を求められた彼は、板ばさみを避けるため、おざなりな相槌を打ったきり目の前の薬草に集中する。
ふたりの魔導騎士はあの話を聞いた後も態度を変えようとしない。
レイディアスは彼等がリベルの田舎具合と農民と変わらない生活の貧しさに、彼への見方を変えることを予想した。半ば期待してわざと話したといってもいい。
できた人格だから掌を返す真似はしないのだろうか。内心はいきなり現れた貧しい騎士に頭を下げるなど、不愉快なことに違いないのに、無理をしていると思うと居心地が悪い。せめて権高に振る舞わないようにしようと思う。
リベルの裏庭にも広い薬草園があり、領民の薬は大体そこでまかなっていたが、さすがに伯爵の膝元は桁違いだ。綺麗に木箱に納められた多種多様な薬草・香草を、匂いを確かめながら調合していく。
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